1961年米国の公衆衛生学者ハルバート・L・ダン博士が
WHOの保険憲章前文を元に提唱した概念『ウエルネス』

一般財団法人ウエルネスアカデミー 設立趣意書

 

 

 第二次世界大戦で重化学工業を壊滅させられたわが国は、国民一丸となっての刻苦精励により経済的に豊かになりました。池田勇人内閣の国民所得倍増計画などにより、1960年から1970年の間の実質経済成長率は約11%と高い数値を示しました。しかも、消費と貯蓄、民間と政府のバランスのとれた良質な成長でした。そしてついに、アメリカに次ぐ世界第二の経済大国となったのです。1990年代以降、経済失速や政治混乱により国力の低下が深刻な問題になっている日本ですが、依然として主要先進国の地位にあります。

 

 こうした流れのなかで、日本人の平均寿命は男女ともに過去最長を更新しています。2008年の平均寿命は男79.29歳、女86.05歳です。女性は24年連続で世界第1位です。男性はアイスランド、スイス、香港に次いで世界第4位です。平均寿命の指標からは、経済的豊かさを反映して、日本人の健康水準が着実に傾向的に増進しているように見えます。しかしそうした見方は一面的なものと言わざるをえません。

 

 まず自殺者数を見てみましょう。日本の自殺者数は、1990年代以降、つまりバブル経済の崩壊以降増加しています。自殺の背景には厳しい経済状況があるようです。平成10(1998)年度以降は、自殺者が毎年3万人を超えています。平成21(2009)年度は32845人もの方が自ら命を絶っています。主な原因・動機は、健康問題47%、経済問題25%、家庭問題12%です。健康問題が最多であることに注目すべきです。また働き盛りの男性自殺者が多いことが、男性の平均寿命を引き下げています。

 

 自殺問題の他にも、疾病に苦しむ高齢者の増加、生活習慣病の拡大、国家・地域・職場・家庭の絆の弱体化、そのことも映す思いやりの欠如や精神疾患の増加、自立できない若者の増加、生きがいを喪失した大人の増加といった問題等々、日本人の健康をめぐる状況は複雑で深刻です。こうした状況を克服できなければ、日本の経済や社会の健全な発展も望めません。経済が再生しなくては、福祉社会を維持するための財政再建も覚束ないでしょう。

 

 このように、日本人を真の意味で健康にすることは、日本社会の再生にもつながる話です。真の意味での健康は、疾病や障害の有無にかかわりなく、「輝くように生き生きしている状態」=ウエルネスの定義と捉えられなければなりません。人々のウエルネスを実現し、それを社会のウエルネスに繋げ、人々のウエルネスと社会のウエルネスのスパイラル・アップ(好循環)を実現することが、日本の喫緊の課題であると言えましょう。

 

 人々のウエルネス実現には、医学、薬学、生物学、栄養学、農学、看護学、食物学、環境論、経済学、経営学、歴史学、風土論、筋肉ケア、介護福祉等々の多くの分野のかかわりが必要です。これまでも各分野の専門家が、それぞれの専門知識を精力的に発信してきました。しかし各分野の情報が独立的に発信されたために、受け手にとっては各分野の専門知識をいかに自分に合わせて総合するかで悩むことが少なくありませんでした。

 

 一般財団法人ウエルネスアカデミーは、各専門分野の知識を単純に独立的に発信するのではなく、各専門分野の知識を「すり合わせて」総合化し、重複部分や矛盾部分をなくして発信します。そのことは、単なる科学としての知識を発信するのではなく、理解しやすくて使いやすい、実践としての知識を発信することを意味します。こうした立場で当法人は、ウエルネスに関する事業を行い、社会・環境・健康に寄与することを目的とします。

平成22年5月30日
設立者一同